Yシャツの開衿を描くまでの8つのポイント-台衿付きの衿の描き方を造りから見てみよう!!

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服の描き方

Yシャツの衿を格好良く描きたい!!

 Yシャツの衿を格好良く描きたいと思いYシャツを引っ張りだして観察しながら描いたのですが、そこには想定していた以上の細かい特徴があったのです。そこで今回実際にシャツを解体するなどをし、Yシャツの衿を描くときのポイントを考察しまとめました!

 筆者は服飾を学び縫製士として働いてまいりました。服や布小物に関する知識を活かしてわかりやすく解説できればと思います。今回の記事はYシャツ衿の内部まで解説し、「描くときに気をつける点」「よりYシャツに見える」といった解像度をあげるための解説となっています。よりリアルなしわや形状を描く場合は是非実物の資料を参考にすることをお勧めしますが、参考にした時に形を捉えやすくするための知識として本記事をどうぞご利用ください。

 

キャラの体型は違えども服の素材は一緒!気をつけることも一緒です!

Yシャツ衿の観察

 今回は衿部分ですので首周りを中心に観察していきました。

 次のポイントに沿って進めた先で開衿の解説に移ろうと思います。

Yシャツ衿-4つの解説ステップ
  • step1
    衿の構造、つくり

    衿の中身のつくりを確認します。

  • step2
    衿の形

    衿のそれぞれの部品がどういったラインを描いているかを解説します。

  • step3
    ボタンを閉じた衿の描き方

    開衿を描くにはまずボタンを閉じた状態を描くことが参考となります。

  • step4
    身頃の前たてについて

    Yシャツ開衿のらしさをより高める箇所です!

step1.衿の構造

 Yシャツの衿は「台衿(だいえり」と「上衿(うわえり)」で構成されています。それぞれ表生地、芯地、裏生地、そしてカラーキーパーを縫い合わせた構造となっていました。

 ここで注目してもらいたい点は芯地が使用されている点です。

 芯地の効果を簡単に説明すると「張りを持たせて形状を保つ」「生地に強度をもたせる」などがあります。Yシャツのような薄い生地でも、芯地をあわせることで生地に厚みと張りが出てシワにもなりにくい素材となります。

 観察したYシャツの衿を確かめたところ、上衿にはなんと2枚もの芯地が使用されていました。

 さらに襟先にはカラーキーパーと呼ばれるプラスチック素材の芯材パーツも入っており、これにより襟先の形状がより保たれる仕様となっていました。

 縫われたあとの生地の厚みをはかったところ、身頃や袖といった生地1枚のところの厚みが0.25㎜に対し、衿先が1.9㎜もありました。約7.5倍の厚みの差です。

衿は生地や芯が幾重にも重なって生地1枚よりだいぶ分厚いですね

 これでもかと芯地を使用することによって衿はパリッとかっこよくなります!!

 スーツを着用した際にYシャツの見える部分はほぼ衿まわりと袖口ぐらいです…。

 大抵が綿とポリエステル素材で着るだけでもシワの入りやすいYシャツの生地ですが、要所で芯地を使用することで形状が保たれ、見た目を良くすることができるのです。

 そしてYシャツの衿のようにしっかりと芯が貼られたパーツは手を使うなどして意識して曲げなければ折り目やシワは入らないと思ってもらっていいでしょう。

 そうであればYシャツ衿の形はうねる曲がるといった変形が主となります。

※ここで注意いただきたいのが、このうねる、曲がるといった変形がYシャツ衿の特徴であるということです。ほかのカジュアルシャツ、婦人シャツなどにおいて衿の芯地は大抵柔らかく、1枚のみという仕様が沢山あります。その場合では体を動かした際に衿にしわが入ることもあるのです。うねる、曲がるといった変形で言えば、Yシャツの衿はベルト等に近いかもしれません。

step2.衿の形

 さて衿は体を覆っている「身頃(みごろ)」にとり付けられています。

 身頃において衿と大きく関係するところは「首付け根のライン」です。

 このラインは大きく分けて首の付け根の ①前中心 ② ③後ろ中心 のポイントを繋げたものからなります。それぞれのポイントの位置は以下の通りです。

 デザインと機能を鑑みて身頃の衿ぐりをこのラインよりどれだけ大きくするかを決め、そこにあった衿を取り付けるかを決めていきます。

 そしてYシャツにおいてはほぼこのラインに沿った衿を描くと考えて問題ないです。

他の服を描く時のガイド線としても役に立ちます!

開衿を描くにはボタンを締めた時の衿から

 開衿を描く前に、まずは基本となるボタンを閉じた状態を確認しておきましょう。

 まず首の付け根のラインに沿って台衿を描きます。

台衿は首に沿っている

 台衿の幅は一周3.5cm程、また前中心で重なるときは完全に筒状になるのではなく、首元でV字のラインが出来ます。

首が円筒なので前側も丸みを付けて描くものかと思っていましたが実際は直線的でした。

台衿を広げてみると少しカーブを描いています。この台衿を輪にしたとき首に沿うシルエットになるのです。前側の台衿は少しカーブしているものと記憶していてください。

 Yシャツの台衿の幅は首との隙間は指1本が入るくらいが目安となります。

 ですが人の好みと体はパターン通りではありませんので、スッキリと見せたいから指一本分、きついのが苦手なので指二、三本分、既製品で寸法よく分からず購入したために首周りに指四本分隙間があった等、ここでもキャラクターの普段の服の選び方の考察が捗るというわけです。

Yシャツの首周りは語っています!!

 では次に衿の顔となる上衿について説明します。

上衿の端(後ろ中心)

 後ろ中心において、上衿の幅が4.5cm、台衿の幅が3.5cmと上衿のほうが台衿よりも幅が広くなっています。

 ですが上衿を折り返したとき、上衿の端は台衿の身頃への付け位置と同じラインに収まります。

 理由としてまずは台衿と上衿の縫いラインが表から見えないようにするため折り返し分の控え分になっているからです。

 また上衿と台衿の隙間にはネクタイが通るため、その厚みにより衿からネクタイがチラ見えしない程度のゆとりも入れられていると考えられます。

上衿の端(首横から衿先)

次に今度はネクタイを締めた状態で上衿の衿先までのライン観察しましょう。

まずは衿先までのラインをラインテープを使用し確認してみました。

(注意:写真内のトルソーは婦人用のため首部分が細めとなっております。紳士のトルソーではより衿に沿った太さとなっていることをご了承ください。)

 後ろから首横のラインまで台衿とほぼ同じラインを通っています。資料のYシャツの衿はレギュラーカラーという形状で、首横から衿先のポイントにかけては緩やかに体の中心に向かう直線に近いラインとなっていました。

衿先の角ポイントですが、これは衿の形状の種類によりますのでいくつかご紹介します

 また衿先は折り返した際に丸みを持った形をしていました。これは台衿から衿先にかけてどちらにも芯地が入っているため、張りが強く折れるというよりも曲がる変形をしているためと思われます。またネクタイを締めた際の結び目衿がかぶさるのでより丸みがつきやすくなっていると考えました。

ボタンダウンの衿ではS字になります

step3.ボタンを閉じた衿の描き方  

 ここまでの知識でボタンをすべて閉めた状態に限りますが衿の形を簡略して描く方法をご紹介します。

 衿先の丸みを山なりのカーブで省略した描き方は正面から軽い斜め向きまでになります。より横を向くときは手前側のカーブが逆になるので注意が必要です。

step4.身頃の前たてについて

 それでは衿が付く土台部分、身頃について観察します。

(前知識として、服を観察するときの呼び方では着ている人から見た視点で左右を読んだりしています。)

 身頃のボタンを留める前合わせの部分を「前たて」と呼びます。大抵3cmの幅があり中央ラインにボタンと上衿の付け位置があります。(※重要)

ボタンとボタン穴、上衿の付け位置は同じライン上に並んでいます

前たての構造

 着ている人から見て左の前たてには中に芯地が1枚入っています。

 生地糸を切ってボタン穴を開けるため補強として、また正面にあるのでシワになりにくいようにするための意味もあります。ですので上衿よりかは柔らかいですが張りのある仕様となっています。

 逆に右前の前たてにはボタンがついていますが生地糸は切らないため、生地を折り返した重なり部分にボタンをつけることで補強を担っており、中には芯地が入っていませんでした。

 つまりボタン穴の方の前たては芯地が入って張りがあり折り目が入りにくく、ボタンがついている方の前たては柔らかく折り目が入りやすいという違いがあるのです。

 同じ距離を二つ折りにした場合の比較をしましたが左前たての曲がりのほうが大きいことがわかります。

左前たて
右前たて

Yシャツ開衿の描き方

 さて今まで台衿、上衿、前たての素材について解説してまいりました。

 以上の要素をもとに、開衿の描き方を台衿のボタンを一つ外した状態のYシャツにて解説していきます。

完成図

1️⃣開衿による衿の回転

 まずは形がしっかりしていて変形しにくい上衿から作図します。

(参考としてボタンを閉じた状態の形をガイドとして描いておくと分かりやすいです。)

 上衿は芯地が厚いため首横を支点に形を保った状態で回転します。

 上衿の開き方はほぼ左右対称です。

 この時の上衿の稜線はほぼ直線となります。

2️⃣台衿の回転

 台衿は上衿と同様に首横を支点として手を返すような動きで回転します。

3️⃣右身頃の折り返しライン

右身頃の前たては芯地が入っていないので折りたたまれやすく、開衿の際の折り返しラインはボタン右横から開衿する前の衿ぐりとの接線上となります。

4️⃣右前建て端の長さ合わせ

 衿がひらくことで右前たての端が折りたたまれます。その際ボタンを留めた時の長さを参考にすることでうねり具合を適切な長さで描くことができます。ここのうねりの山は1個くらいが無駄なく描きやすいかと思います。

5️⃣ガイド線を繋げて右前の作図

以上が右衿の描き方手順となります。

6️⃣左衿のガイドライン

 上衿の左側は右側の衿と対称に描きます。

 次に台衿ですが、移動量が上衿の付け根より台衿の先の方が少なくなっています。

 これは左身頃の前たての張りにより、台衿先が引っ張られているためと考えられます。

7️⃣左身頃の折り返しライン

 左身頃の折り返しラインですが、衿側の折り返し支点は右身頃と同じなのですが、右前たてが左前たてに押さえられているのに対し、左前たてはボタンのみに押さえられている状態となります。

 ですので衿側の支点から、新たに折り返す支点となったボタンの円周に沿ったラインを描き、その延長先で左前たてと交わった点が左前たての折り返し支点となります。

8️⃣左前たての作図

 最後に左前たての端のラインですが直線ではなく緩やかなカーブを描いてつなぎます。芯地が入っているので角のある折り目にはなりにくい仕様となっています。

 そしてボタンのある中心線を挟んで左前たての反対側の線を描きます。

 すべてのガイドラインより清書を行えばYシャツ開衿の完成です。

完成!!

あとがき

 この度は当記事を読んでくださり誠にありがとうございました。

 ”なぜその形になるのか”中身を知ってもらうことで雑誌や資料を参考にした時、より形を捉えやすくすこしでも解像度アップのお力になれたら幸いです!

 つらつらと長文で説明してしまったのですが、「かっちりした上衿」と「衿の付け根とボタン、ボタン穴は同じ中央線上」だけでも覚えていただけたらミニキャラやデフォルメしたYシャツにも応用できると思っています。

 ではまた皆様のイラスト衣装ライフを飾れるように次回の記事まで失礼いたします。


服飾専門学校を出て10年、仕事や趣味ででミシンに座り続けて沢山の生地に触ってきました。その経験を活かしてイラスト添削サイト「sessa me」においてイラスト衣装専門として添削を受け付けております。「シワが上手く描けない」「服がどう動くかわからない」などイラスト内の衣装に関するお悩みありましたらどうぞご相談ください。